奈良一刀彫師
吉岡 一泰(よしおか かずやす)
1956年2月15日生まれ 奈良県出身
学生時代、絵画の勉強をしていた時に奈良一刀彫との出合いがあり、絵付けを始めたのがきっかけで、独学により木彫を始める。
以後、個展、グループ展などに参加。
直接お客様とのお取引をすることにより、作品への感想や喜びのお声を聞くことができて、大変嬉しく、また仕事のやり甲斐も感じています。
健やかな成長を願って、初節句にお買い求められるお客様が多く、その思いも受けて、誠心誠意、制作に励みたいと感じています。
伝統の技術を生かしつつ、人々から愛される人形作りを心がけています。
一刀一刀心を込めて彫り上げました。どうぞご覧下さい。
奈良一刀彫について
奈良の伝統工芸である奈良一刀彫は、平安末期に春日大社若宮のお祭りに、田楽法師の花笠に飾った人形が始まりで、江戸末期に森川杜園によって芸術作品にまで高められました。
能や舞楽、雛人形や干支など、材木(楠・ヒバ・檜など)を使って大きな刀法で彫り、金箔・日本画の絵具で極彩色を施したものです。
当店ではその伝統を守りつつ、美しい木曽檜に拘って、現代の生活に溶け込む雛人形や兜を中心に制作しています。親子代々受け継がれる職人さんが多い中、師匠もなく独学で制作を始めました。大切に取り扱いすれば、何十年も綺麗に飾って頂ける逸品を目指して、日々努力を重ねています。
作品ができるまで
01木取り(切断)
木曽檜やヒバの木の角材から
糸のこぎりで切り落とす
材木の節、油スジ、白い部分、皮を取り除き、良い部分のみを型に合わせてバンドソーで切断します。
02荒彫り(たたき)
ノミで大きく削りとります
たたきノミを使って、大まかに削り取ります。
03仕上げ彫り
ノミで細かく彫り上げていく
20~30本ある仕上ノミを使って、バランス良く仕上げる様に気を配ります。
また、次の工程の彩色を意識して、綺麗に仕上げの彫りをします。
04油・あく抜き
彫った木を熱湯でゆでる
木曽檜の油分を抜く液体に浸します。数日後、沸騰したお湯の中に入れ、グツグツ焚いて油抜きをします。
05乾燥
1週間かけて乾燥させる
割れを防ぐため、光、風に当てない様にして、陰干しで1週間ほど乾燥させます。
06地塗り
発色をよくするため下塗りをする
いきなり絵具をぬっても発色しないので発色を良くする為に、下地胡粉(貝の粉で出来た白い絵具)やとの粉を使って下塗りをします。金箔を貼る下地仕事は、特に念入りにします。
07絵付け(彩色)
顔料と日本画の絵具を使って
彩色を行う
日本画の絵具(泥絵具・岩絵具)・本朱(神社の鳥居等に使う絵具)・本金箔・金泥・金粉・プラチナ粉などを使って彩色をします。出来る限り変色し難い色を使うよう心掛けています。
08毛描き・顔描き
毛を描き、目鼻口など顔を描いていく
人形は顔が命です。顔の良し悪しで決まると言っても過言ではありません。顔の土台は、胡粉(貝の粉)を10回以上塗り重ね、厚みを作ってペーパーで、磨き艶を出します。立体に目・鼻・口を描き入れるのは大変難しい作業です。数ミリ以下のズレでも左右のバランスを崩してしまいます。可愛らしいお顔になる様、細心の注意を払い、一体一体心を込めて描き入れます。
09金箔(純金)
金箔をはる
地塗りをし、綺麗な下地を作る事が金箔を綺麗に貼るコツです。
金箔を置くタイミングや刷毛で叩くタイミングも、永年の経験が生かされます。
10仕上げ
出来上がりを細かく確認します。
彫りキズや塗り残し等が無いように、最後のチェックをします。
節句の人形は、一生に一度の人形です。
極上の材料を使って丹念に作り込んだ人形は、
20年、30年後にも綺麗に飾って頂けるよう、
誠心誠意、日々制作に取り組んでいます。